講座
女性の心理的発達(3)
加藤 正明
1
1国立精神衛生研究所
pp.44-49
発行日 1957年8月1日
Published Date 1957/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201322
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閉経期の心理
思春期と並んで閉経期が人生における二つの危期であることは,はじめに述べた通りです.たしかに閉経期は,男性の初老期にくらべて急激におこり,その影響するところも大きいといわなければなりません.ことにそれが受胎能力の喪失の宣言であるところに,心理的にも大きな意味をもつています.もちろん閉経期には,生理学的にも内分泌ホルモンであるエストロヂエンの減少という現象のほか,男性と同様に皮膚,筋肉,内臓の初老期現象がおこります.しかしこういう生理的現象にともなう精神的な現象は,同時に社会的,心理的条件によつて左右されるといえます.
例えばこのころになると,子どもたちも成長して,めいめい自分の考えで行動するようになり,母親らしい庇護的な役割は次第に不用になつてきます.夫に対する女性的な魅力も次第に衰えるとともに,長い間の夫との生活にも不満があらわになつてくるころです.ことに,すべてを育児や家事にささげて,自己犠牲的な生活をつづけてきた主婦にとつては,この時期はいわば生活の目標を見失う時期ともいえましよう.しかし人によつてはこのころから新たに自分自身の生き方を再発見したり,隠れた才能を現わしてくる人もあります.
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