講座
長期療養者の心理(その1)
千種 峯藏
1
1関東甲信越医務出張所
pp.24-27
発行日 1954年8月15日
Published Date 1954/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909615
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病院や療養所で,長い間療養を続けている人は,たいてい,共通した或る心理的傾向をもつようになる。それは,淋しがりやで,非常に相手を欲するとか,感受性が強く,神経質で,物ごとに批判的であるとか,殊のほか,不合理や不公平や定まつたことの不履行を嫌うとか,というような傾向である。
この特色ある心理状態は,もちろん,長期療養者のおかれている,特有な境遇に由来するものである。それではその特有な境遇とはどういうものかというと,一般社会から離れて,病院又は療養所,あるいはもつと厳密にいうならば,收容されている病棟だけで構成する,そして,生活の著しく制限された,特有な療養社会の入となるということである。したがつて,長期療養者の特有な心理状態とは,一般社会から遊離した孤独さと,生活の制限された療養社会の単調さ等から発生した結果でもあり,又,これに対する,順応と抵抗の姿でもあるわけである。
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