講座
長期療養者の心理(その5)
千種 峯藏
1
1厚生省関東信越医務出張所
pp.28-33
発行日 1954年12月15日
Published Date 1954/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909710
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不合理を毛嫌いする
どんな人にだつて,どんな場合にだつて,不合理の喜ばれることはないであろう。従つて,これは,長期療養者の特有な心理などというべきでないかも知れないが,長期療養者の場合は,その度が甚だ強いのである。これは,神経質の上に,同一のことにいつまでもこだわつていられる,生活の単調さに由来するものであろう。結局は,そのために,患者を不当に不愉快な思いをさしたり,或いは苦しめたりする結果となるのであるから,看護にまつわる不合理は,極力避くべきである。
ここで,まず取上げたいのは,患者の依頼心による約束を,看護婦が履行しないことについてである。近来は,患者の依頼による約束は,よく守られるようになつたといわれるが,それでも看護の仕事は,甚だ多岐にわたり,繁忙でもあるし,又,看護婦によつては,かなり呑気な性分のものもいるので,約束を忘却したり,等閑に附したりすることが,稀なものではない。
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