講座
長期療養者の心理(その2)
千種 峯蔵
1
1関東甲信越医務出張所
pp.23-27
発行日 1954年9月15日
Published Date 1954/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909634
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
淋しがりやで相手を欲する
長期療養者は,いわゆる淋しがりやで,相手を欲しがる。人は孤独にたえられるものではない。長期療養者は,実社会から離れて,僅かに新聞やラヂオ等の報導機関によつて,実社会と繋つているに過ぎないのであるから,自然孤独を感じ,童心に帰つて,相手を欲しがるのは,まことに当然のことであろう。従つて,少しでも長く接触できる人ほど,長期療養者にとつては,大事な相手ということになるのである。
それでは,実際に,その相手になるのは誰かというと,前にも述べたように,患者お互と看護婦とである。患者相互というのは,主に同室者のことであるが,長期療養者にとつてはこれは,非常に重要な相手である。何故なれば,境遇が同じである上に,四六時中起居を同じくするからである。しかし又,それだけに,組合せが悪い場合には,弊害も深刻である。看護婦の場合は,特定の病室という制限がなく,全病棟の患者の相手となる上に,いわゆる療養生活の与え方の担当者であるところから,患者全体にとつては,利害関係の緊密な,最も重要な相手ということになるわけである。
Copyright © 1954, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.