講座
長期療養者の心理(その4)
千種 峯藏
1
1関東信越医務出張所
pp.52-54
発行日 1954年11月15日
Published Date 1954/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909694
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日課の手抜きを気にする
各病棟には,それぞれ,臨床看護の日課があるわけだが,その定まつたことが,定まつた通りにゆかないと,長期療養者は,それを非常に気にする傾向がある。単に奥歯に物のはさまつたように,何となく気になる程度のものから,理由の釈然としないものについては,そのために,1日を不愉快に過すことすらあるのである。
長期療養者は,どうせ孤独で単調な日々をもてあましているのだから,その生活に変化があつた方が,喜ばれそうなものだと考えるならば,それは患者の実際を知らないものの考えである。前に述べたように,感受性が高まつておるために,少しの変化でも見落しをしないばかりでなく,その変化の詮索をすることが,避けられないのである。自らの詮索で自ら苦しむと知りつつも,それを避けられないのが,長期療養者の心理というべきであろう。
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