特集 病院の長期療養サービス
長期療養と病院経営
天本 宏
1
1天本病院
pp.968-973
発行日 1993年11月1日
Published Date 1993/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900497
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
「長期療養と病院経営」というテーマを「老人医療」という切り口から論じてみたい.今「老人医療」という言葉はすべて慢性期の老人医療を想定して語られている.そして急性期の老人医療は今までの医療で「良し」として放置されてきている.これは「間違い」であるという立場から論じてみたい.社会サービスの入口の整理は全くなされず,歴史的に振り返ってみても,昭和37年措置対策として老人福祉法が制定され,特別養護老人ホームが先ず誕生したが,平成3年福祉八法の改正がなされ,より普遍的な施設として生まれ変わろうとしている.しかし,老人保健施設,老人病院との役割分担などのすり合わせは一切されておらず,社会サービス全体の中での整合性に欠ける.また医療の歴史においては社会的入院患者の増加に伴い老人病院が自然に誕生し,急速に増加していき,疾病保険としての社会保険の財源に大きく喰いこんでしまった.その老人医療費の適正化のために老人病院制度が診療報酬の制度の中に誕生し,現在に至る.未だ,老人保健施設,特別養護老人ホームとの役割分担などについての整合性について論じられていない.また老人保健施設の誕生は,老人病院と特別養護老人ホームに同じような要介護老人が入所,入院しているにもかかわらず,サービス,負担が異なるのはおかしいということで,医療と介護サービスを同時に提供できる仕組みとし,生活費は自己負担していく制度として誕生した.
Copyright © 1993, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.