発行日 1952年1月15日
Published Date 1952/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909338
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白い小さな球の行方を追つて,何萬という眼が吸いつけられ,心もうばわれてしまう。泥にまみれた純白のユニフォームも,球のまにまにかけめぐる。眼をうつせば,發育のよい双脚をフルに使つてハードルをとびこえようとしている何人かの姿,1本の棒に全身をたくして,とびのように曲げた體が空におよぐ高とびの姿,廣いフィールドの隅から隅まで,どのグループをみても若さの躍動と,みなぎる健康が,ほしいまゝにくりひろげられている,みているものまですつかり若やいでしまう。健康美という言葉があるが,健康の美しさは,若さからのみ生れるものだと深く味う。健康・美・情熱・力・等々の言葉は皆若さの代名詞,若さを代辯する言葉に他ならない。朝倉氏作の「晨」という彫刻をみた。うら若い女性が,心もち面を上に向け,胸をはつて前進する像であつたが,眺めている中に,自分の胸を思わずぎゆつとおさえたくなる程胸がおどるのを忘れる事が出來ない。その等身大の女性の姿の美しさ,全身からほとばしり出る若さのもつ迫力・滿身にあふれる希望の表徴・自分の胸のねがいを,その姿にたくしたくなるようなしよう動にかられ大きくいきをしたのを憶えている。「あの人は若い。」「何時までも變らない」という批評もよくきく。「顔まで若い」とすら人はいう。これは其の人の精神状態をさしていうのであつて,年の割合に考え方も若く,情熱的で,はりのある人に違いない。
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