名詩鑑賞
六月—佐藤惣之助
長谷川 泉
pp.56-57
発行日 1952年6月15日
Published Date 1952/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907082
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詩人佐藤惣之助には大きな變貌の跡がある。彼はサトウ・ハチローの父である佐藤紅緑に師事して俳句や小説などを學んだのち,詩に轉じたのであるが,初期に書かれた詩は當時の文壇を蔽つていた人道主義的色彩が極めて濃い。處女詩集である長詩「正義の兜」はこの傾向の代表的なものである。これは大正5年に出た。その後大正6年に出た詩集「狂へる歌」でもこの色彩はぬぐい得ない。この中の「無惨な姿」という詩の一部を見よう。
何といふ無惨な姿だ今日の二人の姿は何もかも流行おくれでおまへの袖口には綿が出ている私達は痩せるやうに寒いそれでもおまへは元氣でうれしさうだ この日曜を遊ばうというのでこの停車場までかけつけたのだ
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