映画
六月の話題—1957年の洋画
原田 順
pp.44-45
発行日 1957年6月1日
Published Date 1957/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201284
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我が国には初登場だが,既に世界的定評ある監督による,純粋映画とも芸術映画とも称すべき二作品が,はからずも時を同じくして公開されようとしています。間題のロベエル・ブレッソンの「抵抗」と,ニユーヨーク映画批評家協会賞及びアカデミー賞の外国映画賞を獲得したフェデリコ・フェッリーニの「道」がそれです.共に上半期のベスト,いな本年度最高を狙う作品としてここに取りあげたいと思います.
「抵抗」Un condamné à Mort s'estéchappe ou "Le Vent souffle où il vent"(仏.1956年度作品.1時間45分.新外映配給)フランスの監督の中でも特にその独自な表現様式によつて,一流中の一流と目されているロベエル・ブレッソンが,レジスタンの一人であつたアンドレ・ドヴィニイの手記を元に,事実をありのままに映画化したものです.ドイツ軍に捕えられた主人公フォンテエヌ中尉(フランソア・ルテリエ)が,モンリュックの監獄へ自動車で護送されるところからはじまり,投獄された彼が死刑を前にひそかに脱獄を計画,その手段を着々と実行してゆく監獄内での日常生活が主題となつています.筋は簡単です.しかしこの映画の真髄に,その主題の扱い方にあります.
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