灯影 ブックレビュー・6
—マーク・トウエイン作,龍口直太郎譯—「イヴの日記」他五篇
石垣 純二
pp.52-55
発行日 1952年6月15日
Published Date 1952/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907081
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6月のことば
「讀書に方なし」というごとばがありますが,たしかに讀書には型も法も術もないともいえます。寝ころんで讀んでよく,滿員の電車に立ち搖られながら讀んでよくです。尾籠な話で恐縮ですが,私など,ときどきはゞかりの中で讀んでいて足が痺れて立てなくなることがあります。讀書の時間がないというのは言いのがれであつて,讀書の意志がないのでありましよう。降りつゞく長雨の中に,ひつそりと閉じこもつて,ひもとくカビくさい紙の匂い,その秘密の世界,醫長のとんがつた顔も,氣むづかしい患者の棘のある聲も,すべては遠くへ遠くへ消え失せて……。
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