編集デスク・32
「女のいくさ」と佐藤得二氏
長谷川 泉
pp.53
発行日 1963年10月1日
Published Date 1963/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663904453
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
佐藤得二氏の「女のつくさ」が直木賞を与えられた。64才の狂い咲きの作家出発である。ちかごろは学生作家の出現もさかんで,わりあいに若年作家の文壇登場がもてはやされていた。20代か,時にはハイ・ティーンの職業作家の登場がジャーナリズムを賑わしたのである。佐藤氏の場合は,全くその反対である。いかに人間の寿命がのびたとはいえ,還暦すぎの交壇登場は異例である。
佐藤氏は文部省の社会教育局長もやった人である。局長のまえは督学官もやり,その前は一高の生徒主事でもあった。一高へくる前は京城大にいた。一高へ招いたのは,やはり京城大から来た安倍能成氏などの推ばんがあったのであろうか。私が一高の生徒であった頃は生徒主事であった。直接教えは受けなかったが,私は向陵時報の委員をしていたので,その原稿のことで生徒主事室では顔を合わせたことがある。その頃の生徒主事の親玉はのちに立教大総長にもなった佐々木順三氏であった。
Copyright © 1963, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.