コンタクトレンズ(53)
佐藤春夫のこと
長谷川 泉
pp.13
発行日 1964年8月10日
Published Date 1964/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203173
- 有料閲覧
- 文献概要
このところ詩人の死が相ついだ.三好達治についで佐藤春夫の急死があった.佐藤春夫に会ったのは,吉田精一博士が大著「自然主義の研究」を完成した時に,ごく小範囲の人たちで出版記念会を催した時のことであった.ずい分大きな,いわゆる福耳というやつで,その福耳をゆさぶりながら祝辞を述べていた印象が,今でも忘れられない.
その席には今は亡い仏文学者辰野隆もいた.辰野隆は,枕になるようなこの大著は,寝て読むには手がくたびれてしまうと,例の辰野ばりの皮肉ともとれるユーモアで人を笑わせていた.
Copyright © 1964, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.