醫學のあゆみ・8
ネオ・ダーウィニズムとルイセンコ學説
杉 靖三郞
pp.57
発行日 1952年3月15日
Published Date 1952/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907024
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生物の進化はどのようにしておこつかを説明した説をダーウィニズム(Darwinism)という。この説は進化説の中で,もつとも根處がしつかりしていて,一般に信じられている。生物には,同じ種類の間でも多少の變異がおこり,そのなかで生活に都合のよいものだけが生きのこる(適者生存)のである。そしてその變異は子孫に傳えられ,その生物は次次と變化してゆくというのである。この際,變化に方向を與えるものは自然の力であるとする(自然淘汰)。
このダーウィニズムで,その生物が一代のうちに得た形質つまり獲得形質のうち,體をつくる物質の變化は遺傳しないで,生殖物質の方に與えた變化だけが遺傳するとし,これによつて自然淘汰が行われるとする考え方,これをネオ・ダーウィニズムという。ワイスマンらによつて唱えられ,獲得性(一生の間に得た性質)はあまり問題にしないで,自然淘汰に重點をおく行き方である。この點ラマルキズムや,新しいルイセンコ學説が,環境の直接作用による獲得形質に重きをおく近代學説と對蹠的立場に立つ。
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