原著
荻野學説による排卵期算定の新法
佐藤 彰一
1
,
村山 茂
1
1慶應義塾大學醫學部産婦人科教室
pp.397-399
発行日 1950年10月10日
Published Date 1950/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200394
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成熟婦人において排卵の時期を推定することは,不妊の場合においても受胎調節の場合においても最も必要なことである。現在婦人の排卵を推定すべき方法としては,腟内容塗抹標本及び基礎體温曲線等種々なる方法をあげることが出來る。然るにこれ等の方法は一般に可成り手數を要するものであり,特に受胎調節を行う場合は,唯單に如何なる時期に排卵するものなりやを知れば充分であつて,正確なる時日を知るを要しないのである。これに關しては從來荻野學説を應用した荻野氏法が,一般に用いられていたのである。この方法は荻野學説に立脚し蒐集せる月經周期より推定するものにて,上述の排卵を直接椎定する確實な方法に比し,稍々簡單である點が利點と言うことが出來るのである。
然るにこの荻野氏法を行うに當つては,かなりの例において實際上使用不能のものがあることは,一般に認められているところであり,またこの方法により受胎調節を行い失敗せる例を聞くは稀れなことではない。更にこの失敗例から荻野學説の信頼性を云々するものがあるが,これは荻野學説に信頼性がないのではなくして,寧ろ統計學的にみてこの荻野氏法に缺陷があるためである。余はこの方法より學説の批判せられるのを防ぎ,この學説のより正しい使用方法を考え,同氏法の不充分なる點を統計學的に指摘し,新たなる見地より推計學を基とする方法を提案し,諸家の批判を乞う次第である。
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