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フロイド學説の歴史的展望
懸田 克躬
1
1順天堂醫科大學神經科
pp.5-9
発行日 1951年7月15日
Published Date 1951/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200870
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I.まえがき
もしも,ここに與えられた"精神分析學(以下P.Aと略そう)の歴史的展開"というテーマが,P.A的な思想の歴史的なふるさとを求め,また,その行きつくべきカナンの地を明らかにするという意圖であるとすれば,われわれは,O.Pfisterなどとともに,そのリピドー説との類似を求めてプラトーンに,さらには,辮證法的な解明を通じてまことの自己認識に到るという經路をたどつてはソクラテスたまでさかのほり,また,そのたどりつくべき沃野を求めては,W.Reichなどとともにソヴイエツトやドイツにおけるマルキシズムの側からの批判を考慮し,さらには,アメリカにおけるネオ・フロイテイアンに封するBartletその他の批判との對決をも省みなければならないであろう。
またもしも,問題をフロイド自身における思想の展開に限り,そして,また,フロイド的な,抵抗の強いところには,全體の錯叢をとく重要なキイ・ポイントが秘められてあるという考え方に從つて,その秘められたものを探つてみるにとどめるとしても,われわれは,フロイドが力をこめてその影響下にはないことを力説した,ショウペンハウエルやニイチエの先達と,シャルコーのもとにおける同門の人ジヤネーの思想との對決がさけられないものとなることに氣づかないわけにはゆかない。
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