灯影 ブックレビュー・3
—キヤザリーン・T・マーシヤル著,大森繁子譯—「夫とともに」/—石垣綾子著—「二十五年目の日本」
石垣 純二
pp.54-56
発行日 1952年3月15日
Published Date 1952/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661907023
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ある人が「あなたのように賞めてばがりでは書評じやないではありませんか」と批評しました。読者の皆樣も同じ感想をお持ちかもしれません。斷つておきますが,私は決して書評欄をつくつたのではありません。新刊紹介を兼ねて読書の樂しみを傳えたく思うだけです。そんなつもりで御読み下されば,この辛苦々々の仕事も酬いられるというものです。
一軍人の妻の年代記と副題がついていますが,ついてなくても「夫とともに」の題名がすべてを物語つています。これはマーシヤル・プランの責任者であり,第二次大戰中の米國參謀總長であつたマーシヤル元帥の夫人の回顧録です。日本の舊元帥の奧樣が同じものを書いたらさぞかし固苦しく仰々しいものが生れたろうと思いますが,大學を出てから女優生活を送つたという人だけあつて,筆も柔らかく,ユーモラスな味わいもあつて,りつぱに人間記録になつてるのに感心しました。しかもこの著者が辯護士の未亡人であり,マーシヤル元帥(當時中佐)と再婚したとき,既に3人の子があつたことにも驚かされました。コチンコチンの日本人には想像もできない自由でゆつたりした社會通念を羨しく思うだけです。
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