特集 耳鼻咽喉科診療の進歩
鼻のアレルギー學説の進歩
猿渡 二郞
1
1北海道大学
pp.670-677
発行日 1954年12月15日
Published Date 1954/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492201240
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緒論
アレルギーAllergieの学説は今から約50年前にピルケー(C.v.Pirquet 1906)が提唱し,当時解釈の困難であつた種々の疾患や現象に対して説明を試みたのに始り,其後,病理学,免疫学,血清学などの各分野で絶えざる研究が進められ,臨床上の観察と相まつて,その概念は益々発表の一路を辿つたが,また一面に説明の困難な現象をも包含するに至り,今なお多くの学者の興味と,研究の対象となつているのである。従つて鼻のアレルギーもアレルギー学説の進展に伴い,その解釈を学者によつて多少異にしているのは已むを得ないことである。併し今,鼻のアレルギーに関する文献を通覧すると従来からのアレルギー学説で説明がつき,実験的にも証明し得る範囲に属するものと然らざるものとに分けることが出来る。
前者は既に成書に於いて鼻のアレルギーとして記載され,一般にも承認されているもので,私はこれを便誼上,狭義の鼻アレルギーと呼ぶことにする。後者は鼻のアレルギーとして雑誌に報告されてはいるが,実験的の証明が困難で,説明の過程に若干の想像を以て補わなければならないものであり,従つてまた各学者の同意を必ずしも得て居らないものを指し,私は前者に対して之を広義の鼻アレルギーと名付けることにする。
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