抄録 國内文献
ノレイセンコ遺傳學説の批判,他
Theodosius Dobzhansky
pp.56-60
発行日 1949年3月25日
Published Date 1949/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905450
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ルイセンコ教授の遺傳學説については,10年程前から紹介されているが,原著に近づき難いこと,及び米ソ兩國關係上からあまり米國では批判がなされなかつた.しかし彼の"遺傳と變異性"が飜譯(Dobzkansky譯,Lysenko, T. D. Heredity and its Variability 1946)されたし,批判をさけることは,却つてソ聯の科學を輕べつするものと自分は考えるので,敢て批判を試みるわけである.
ルイセンコはこの著書で,"メンデル――モーガン的遺傳學"を,遺傳の定義・研究方法・生殖細胞の融合等について攻撃し,遺傳とは"生物がその生活や發育のために一定の條件を要求し,かつさまざまな條件に對して一定の反應をするという性質である"といつているが,‘メンデル――モーガン派’の遺傳が環境に對する生物の反應を決定するといふ見解のやき直しにすぎない.染色體説については,"見える所だけをかいて見えない所は,‘メンデル――モーガン的遺傳學説’に從つて臆測を逞しくしてつくりあげたものである"と言い,生殖細胞の合一の時は"それらが互に他を同化する"と考える又メンデルの分離の法則については,丁度3:1の分離を示すデーターはなく,19と20のものも1と30のものもあるから全く間違つた考え方であるとしているが,確率論や統計學を知らないのではないかと疑わせる.
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