名詩鑑賞
落葉—ポール・ベルレーヌ上田敏譯
長谷川 泉
pp.50-51
発行日 1950年10月15日
Published Date 1950/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906730
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上田敏の譯業が日本の近代詩の發展に大きな役割を果したことは,今日誰も否定することが出來ない。彼の譯詩は飜譯ではあるが,鏤骨の若心によつてすばらしい出來榮えを示し,ほとんど創作詩に近いものを生み出している。あるものはこれ以上の譯はとても望めない名譯として彼の名を高からしめ,またあるものは原詩以上ともとなえられた。彼の譯詩は「海潮音」におさめられた。こゝに掲げた「落葉」(原名は「秋の歌」)もまた「海潮音」中の一つである。
「海潮音」は主として象徴詩といわれるものの移植において大きな意味を持つた。ポール・ベルレーヌの「落葉」は,それ自身落葉のように數奇をきわめた詩人の代表作であり,また傑作と呼ばれるものである。そして敏の譯出した「落葉」は象徴詩の飜譯中でも名譯の聲が高く,カール・ブツセの「山のあなた」などと共に,彼の代表的な譯業として有名である。
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