Essay
息子が遺した宝物—医療現場のみなさんへ
佐藤 律子
pp.963-966
発行日 2002年10月1日
Published Date 2002/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906109
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息子が逝って
人一倍寂しがりやでなまいきな次男・拓也が小児がんの宣告を受けて亡くなるまでの1年2か月,私はずっと彼につきそってともに闘病生活を送りました.1997年9月18日,これから人生が始まろうという16歳の季節に,恋人もいないまま,拓也は旅立っていきました.最期のときには,「さようなら.あなたに出会えてよかったよ.またいつか会おうね…….本当にありがとうね……」.そう言ってわが子の唇にお別れのキスをして,一房の髪を切り,爪を切ってやりました.それも,彼女がいなかったからこそ,できたのかもしれないと自分を慰めたりします。本人は精一杯生ききって人生を卒業していきましたから,案外,こんな私の気持ちをどこかで笑っているのかもしれません.
拓也の葬儀から数か月が経った1997年の晩秋.「いつまでたっても家事が上達しない専業主婦.何をやっても熱しやすく冷めやすい.取り柄は楽天家だけ」,そんなダメ主婦歴25年の烙印を押されていた私が,小児がんに苦しむ方たちのために,「自分にできる何かをしたい!体験談集を作ろう!」と思いたったのでした.
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