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2003年に歌の中で「桃花鳥(とき)が七羽に減ってしまったと新聞の片隅に写りの良くない写真を添えた記事がある」*というフレーズを聞いた.その後,日本産野生種のトキは日本の空に再び,そのまぼろしの翼をはためかせることなく全滅した.しかし昨春,中国の協力を得て自然界で38年ぶりにときのひなが巣立ったとの嬉しいニュースがあった.また,さかなクンの活躍により秋田・田沢湖で70年前に絶滅したと考えられていたサケ科の淡水魚・クニマスが,山梨・西湖で発見された.しかし,その一方で北海道では1955年以降,本州以南では1979年以降にその目撃情報がなく,2012年8月にニホンカワウソが絶滅種と判断され再びその姿を見ることができなくなった.個体数が少ない種は絶滅へと向かう可能性があるものの,対応を誤らなければ絶滅を免れることができると考える.
リハビリテーション医について考えてみるとどうだろう.現専門医数は少ないものの,毎年少しずつその数は増加している.専門医が少ないからといって,このまま絶滅することはないように思われるが,リハビリテーション医の立場は安泰かというとそうでもないようだ.旭川に着任してから2年弱になるが,この地で「リハビリテーション科の医師は何をしているの」という質問を耳にすることは少なくない.私がリハビリテーション科の医師を志した20数年前に,同じような内容をよく尋ねられたことを思い出す.当時はリハビリテーション科の医師が今より断然少なかったので,リハビリテーション医の活動が世に知られていないのはしかたがないことかと思っていた.しかし長い年月を経て,ある程度リハビリテーション科の医師が増えているにもかかわらず同じ質問をたびたび聞くことは残念である.これまでリハビリテーション医療の教育が十分でなかった当地の医学生からこのような質問を受けることはまだしも,医療関係者からも同様の質問が少なからず来たときにはやはり戸惑いを感じた.リハビリテーション医の存在はこれほどまでに認識されていないものだということを改めて理解した次第である.
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