特集 患者の問題?看護婦の問題!—「心理的ナーシング」とは何か
[事例4]危機状況にある家族への援助
篠原 隆
1
,
高沢 昇
1
1帝京大学医学部精神神経科
pp.459-461
発行日 1990年5月1日
Published Date 1990/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661900120
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悲しい再会となった救急患者のCさん
H病院は都内の私鉄始発駅から1時間ほどの道のりの近郊都市に建つ大学病院である.この病院の救急部門は,かつては心筋梗塞や脳血管障害の急患を主に収容していたが,近年開通した高速道路の影響で,交通外傷を治療する機会も増加し,腹部等の一般外科の救急患者も受け入れるようになってきている.そんなH病院にCさん(55歳,男性)が救急車で搬入されたのは,残暑のさなか8月中旬のある日の午前9時頃であった.
Cさんは刃物によると思われる3箇所の腹部切創により多量に失血し,ショック状態であった.気管内挿管および人工呼吸,輸液および昇圧剤投与,止血,中心静脈確保,動脈ライン確保などの救命処置がすすみ,家族からアナムネーゼを聴取する段階で,Cさんの姓名を確認した担当のナースは,はっと驚いた.Cさんとは,4日前にこの救急外来で出会ったばかりであったのだ.その時Cさんは,アナムネーゼの聴取に答える家族としてここに来ていた.
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