特集 危機状況にある患者の理解と看護の役割
手術して食道がなくなった!—術後,危機状況に陥った患者への援助
安藤 幸江
1
,
大越 一代
2
,
杉田 雅美
2
1国立佐倉病院2階東病棟
2国立佐倉病院
pp.1131-1134
発行日 1986年10月1日
Published Date 1986/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921539
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はじめに
手術を受ける患者というものは,健康な時と同じ生活に戻りたいと願って,多くの苦痛や不安に耐えているのではないだろうか.現在当院では,癌患者には病名を告げず,‘潰瘍・良性腫瘍で癌性化するかもしれない’と説明してから手術することが多い.しかし,当の患者にとって,術前の説明と術後の身体の状況との違いを目の前にした時,その不安は非常に強度となり,心身が共に脅かされる状態になる.
今回紹介するケースは,食道噴門癌(進行癌)の患者が,術前に胃潰瘍の手術をすると説明されたにもかかわらず,食道・胃全摘,食道瘻・空腸瘻造設となった.術後3週間を経過した時,経管栄養による下痢,腹痛,胸苦しさ,食道瘻からの喀痰・唾液の流出が多くなり,それに加えて自分の食道瘻の創部を見た事がきっかけとなり,不安を強く表出してきた.このような患者の危機状態にどのような看護介入をしたらよいか,看護場面を通して考察したので報告する.
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