連載 臨床の詩学 対話篇・3
やさしい心
春日 武彦
1
Takehiko Kasuga
1
1多摩中央病院・精神科
pp.68-75
発行日 2010年1月1日
Published Date 2010/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661101565
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外来通院をしている統合失調症の女性がいた。まだ二十代で、いろいろな事情から、生活保護を受けながら独り暮らしをしていた。デイケアとか作業所につなげてみようとしたものの、対人関係ですぐに混乱してしまうため集団になじめない。そんな調子だから、もちろん就労も無理である。アパートに引きこもって刺繍をするのが趣味だという。どんなものを制作するのか知りたかったが、教えてくれなかった。もちろん完成した刺繍を見せてくれたこともない。
刺繍をするくらいならば自炊もできるかと思ったら、それはしない。いつもコンビニ弁当を食べている。そのせいか、運動不足も重なってか、浮腫んだような不健康な太り方をしていた。
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