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今回の行政解釈変更の背景にはさまざまなことがあると思いますが,解釈の変更に至る経緯がよくわからないという印象があります.以前から医師の指示のもとで看護師が静脈注射を実施している医療施設が大半にのぼるようでもありますので,看護師は静脈注射をしないほうがいいという論議にはならないと思います.しかし従来から続いてきた(1951年の通知により,静脈注射が看護師の業務外として禁止されてきた)ものをなぜ変更するのかという思いがあります.今後心配なのは医師がこのことをどう認識するのかです.医師との関係については,施設ごとに考え方があると思いますが,今回の看護師等による静脈注射の実施についての解釈を十分に行ない,整理しておく必要があります.
注射実施に関するインシデント・アクシデントは,実施行為でのみ起こるとは限りません.問題を医療安全面から考えると,実施行為以外に,指示の出し方,指示確認,調剤,運搬過程にも問題発生の危険があるため,看護師だけでなく,薬剤師や医師の業務の再確認,指示の進め方,物品管理,教育など,多くのことを整備する必要があると思います.このような討議もせず,ただ看護師も静脈注射をやりましょうではあまりにも危険だと思います.
たとえば「静脈注射」と一口にいいますが,どこからどこまでを静脈注射の範囲とするのでしょうか.医師が指示を出すことには変わりはないと思いますが,出されたオーダーのミキシングは誰がするのでしょうか.針を刺すだけでなく,薬剤管理,物品管理,刺入後の観察,緊急時の対応など,関連する業務をすべて行なうとなると,よほどきちんとした業務手順がなければ混乱すると思います.しかもその手順はエビデンスに基づいたものでなければなりません.いままで静脈注射に関する研究もほとんどない中で難しいことが山のようにありますが,対応していくためには問題をいくつかに分けて考えていくしかないと思います.
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