感染症フェロー便り・2
―全身を診る①―微生物の視点・解剖学的視点
松永 直久
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1UCLA Affiliated Program in Infectious Diseases
pp.598-599
発行日 2006年7月1日
Published Date 2006/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100384
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ある日,胸鎖関節炎の50代男性を診てほしいという依頼が来ました.関節液からグラム陽性球菌が認められ,結局,メチシリン感受性の黄色ブドウ球菌と判明しました.このような患者さんにはセファゾリンや,ブトウ球菌をカバーするペニシリンであるオキサシリンを勧めて終わり,というわけにはいきません.
胸鎖関節に感染を起こすのは,外傷により皮膚から細菌が侵入するのが一般的ですが,この患者さんは外傷を否定しています.では,なぜこのようなところに感染を起こすのか.実は,胸鎖関節の感染は,ヘロインなどの違法薬物を自分で注射している患者さんに多いことがわかっています.患者さんに経静脈注射について尋ねると,答えは“Yes”でした.注射針の刺入部位から,血行性に細菌が胸鎖関節に行き着いたのです.ということは,血管をたどっていった先にある臓器の感染も除外しておく必要があります.心内膜炎です.とくに経静脈注射常用者は右心系心内膜炎に罹りやすいのです.またseptic emboliとして,細菌が肺に飛び,多巣性の肺炎を起こすこともあります.
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