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感染管理認定看護師の役割
1995年に発足した日本看護協会による認定看護師制度により,2000年にようやく「感染管理」分野での専門教育課程が開講した.感染管理実践の基盤となる「疫学の知識と院内感染サーベイランスの実践技術」では,対象を集団として捉える視点が重要不可欠なものとして求められ,個々の患者ケアを通した看護経験の積み重ねだけでは修得しがたい知識・技術として,専門教育に位置づけられている.感染管理認定看護師は,自らがサーベイランス活動などを実践し,その結果を分析することを通して,施設にどのような感染管理上の問題が存在するのか,また,施設に必要な感染管理システムや対策は何かを明らかにする.さらに導入のための計画を立案し,導入後はその効果を評価し継続的なケア改善活動を推進する.このような活動をとおして,医療施設におけるすべての人を感染から守るために,効果的・効率的な感染管理システムを再構築し,改善していくことが認定看護師の役割である1).
現場の看護師の役割
認定看護師の感染管理活動と協働しながら,実際に個々の患者ケアに直接的に関与するのは現場で従事する看護師である.つまり認定看護師が感染防止の視点でケアを見直し改善する計画立案にかかわったとしても,実際に具体的なケアを展開し患者に提供するのは認定看護師ではなく,現場の看護師の役割なのである.また,看護師を含む医療従事者および医療施設内にいるすべての人が院内感染の対象になりうる.このため,自身を院内感染から守り,さらに他の医療従事者や患者家族などに対しても院内感染のリスクから守る手段を指導的な立場で推進していく役割を,個々の看護師は担うものと考えられる.
院内感染を予防するためのケアを看護師が積極的に取り組む意義は,患者のもっとも近くに存在し,療養環境を整え,患者への清潔維持へのかかわりという基本的なケアをとおして,感染を予防することができるからである.その反面,感染のリスクを高めることが知られている侵襲的な医療器具や処置を介して,患者間での伝播を引き起こしたり,医療従事者自らが伝播に直接関与する可能性があることも認識しておかなければならない.
看護師は患者個々のリスクあるいは処置やケアに伴う感染のリスクをアセスメントし,常に感染予防の視点からそうしたリスクを減らさなければならない.もちろん,最善の努力をしたとしても,院内感染はすべて予防しきれるものではない.しかし,その場合にも,患者の状態をどの職種よりももっとも密接に観察し,感染発生の徴候を見逃さない立場にあるのは看護師であり,重症化や伝播の拡大を予防することに積極的な関与が可能である.だからこそ,個々の看護師の感染予防への意識を高めることが重要なのである.
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