特集 ここまでできる! 外来看護―知恵を絞って成果につなげる
外来看護体制次第でここまでできるHIVケア―セルフケア力を支えるコーディネーターナースの役割
池田 和子
1
1国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター
pp.990-994
発行日 2004年10月1日
Published Date 2004/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661100543
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はじめに
先日,はばたき福祉事業団(薬害エイズ患者団体)からの依頼による相談事業として,Aさん宅を訪問した.Aさんは他院で治療を受けている60歳を超えた高齢者で,投薬を受けて10年近く経過し,先月まで約3か月入院していた.Aさんは,処方された沢山の薬を見せながら「どれがエイズの薬かわからない」と言う.さらに検査データも知らない.だるさや眠気などの症状が,病態からきているのか,薬剤の副作用なのかわからずに,Aさんは不安を訴えるのだが,「先生がきちんと診てくれているし,聞くのが申し訳ない」と繰り返し,「看護師さんは忙しそうで声をかけられない」と言う.Aさんの話を聞いた後,主治医に連絡して,筆者が所属するエイズ治療・研究開発センター (以下,ACC)を受診してもらうことにした.
このように,自分の治療内容や検査データを知らずに医療を受けている人は,決してめずらしくない.ACCには,他院で治療中の患者から相談が寄せられるが,その多くは「治療に関する質問内容とその方法」である.むろん,医療者の対応不足を改善させることが優先課題であるが,医療者に気を遣って自分の状況を聞けないということは患者自身の課題であり,むしろ患者が医師との間に距離を置いているのでは,と感じることが多い.
HIV感染者は,治療の進歩と患者自身のセルフマネジメント力次第で,長い療養生活を期待できるようになった.専門的な知識が必要なHIV診療とはいえ,患者がセルフマネジメント力を身につけるためには,看護職がこれまでに培ってきた知識・技術を応用すれば,十分に対応が可能である.
本稿では,コーディネーターナースとしての筆者らの実践を紹介する.
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