ちょっとサイエンス
脚気はかつて伝染病だった?
牧 智子
pp.594
発行日 1993年7月25日
Published Date 1993/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611903325
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時代の変化を映す脚気
最近ではほとんどみられなくなった脚気。足を組んで膝小僧の下を小さなハンマーのようなものでポンと打つと,足先が空を軽く蹴るように動くのが面白くて,子どものころには「脚気診断ごっこ」にうち興じた記憶があります。今は日本人の栄養状態も向上して典型的な脚気になる人は少なくなりましたが,昭和30年ごろまではまだまだ多かったそうです。高度経済成長以前の,とりわけ農村部では,農繁期には料理に時間をかけている余裕はなく,漬物にご飯で食事を済ませることが多く,脚気にかかる人も多かったようです。
当時は田植えでも何でも人の手でしなければならず,さまざまな耕作機械の恩恵を受けている現在の農作業とは大きく違っていました。食事のしたくが後回しになるのも無理からぬことでしょうし,栄養に関する知識も乏しかったのでしょう。心臓の強烈な痛みを訴えるような患者さんにビタミンBとブドウ糖を注射したら,数分でケロリと症状が消えてしまったという話を聞いたことがあります。
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