今月のニュース診断
医療情報の行方とプライバシー—個人情報保護の視点から
斎藤 有紀子
1
1明治大学法学部(法哲学・生命倫理)
pp.366-367
発行日 1999年5月25日
Published Date 1999/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902161
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国民の医療情報売却!?
昨年12月にアイスランド議会を通過した「国民健康データベース法」が論議を呼んでいる。これは,政府が国民27万人の診療・投薬・手術記録,健康診断結果,遺伝情報などをアメリカのベンチャー企業(デコード・ジェネティクス社)に委託してデータベース化し,家系情報の保存や疾患遺伝子の同定に役立てるというもの。約310億円の費用を企業が負担するかわりに,国民は登録情報についての権利を放棄し,分析結果の販売権をデコード社が独占する。
世界に類をみないこの試みで,国内外の遺伝子研究への貢献が見込まれる一方で,国民がモルモットになるのではないか,プライバシーは守られるのか,個人の健康情報で企業が利潤を上げてもいいのかなど,国内外に波紋が広がっている。
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