特集 保健・医療情報の活用
保健・医療情報とプライバシー
里村 洋一
1
Yoichi SATOMURA
1
1千葉大学医学部附属病院医療情報部
pp.332-336
発行日 1986年5月15日
Published Date 1986/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207262
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■プライバシー保護の認識
情報処理技術の進歩と社会への応用が盛んになって,様々な個人のデータが,世の中に流通しやすくなった.それに伴って,この10年ぐらいの間に,プライバシー保護の問題が,にわかにクローズアップされることになってきた.元来,医療は,個人の最もプライベートな部分に立ち入る形の活動であるから,何ものにも先がけて論じられてしかるべきであると思われる.しかし,現在のところこの点が声高に議論に上る事はあまり多くない,公的機関が個人の情報の管理を行う事には,かなりの警戒感が社会にあって,マスコミにも取り上げられる事は多いのに比べると,ちょっと不思議な気もする.
しかし,これには理由がある.元々,プライベートな活動である医療であるが故に,その記録やデータ保護に関しては,法的にも,比較的明瞭に規定されてきており,機密の漏洩に関しては,罰金刑がはっきりと示されているのである(医療法第5条,第73条).一般社会にも,医療関係者は患者の機密を洩らす事はないという信頼感が定着しているように思える.
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