Medical Scope
ポッター症候群の出生前診断
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.756
発行日 1978年11月25日
Published Date 1978/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205471
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諸君はポッター症候群,Potter Syndromeという先天異常の新生児疾患を御存知でしょうか。これは大変有名な疾患のひとつなのですが,どういうわけか,日本では知らない助産婦諸君が多いようです。そこで,まず,今日はポッター症候群の話から始めることにしましょう。
ポッター症候群とは,一口にいうと,両側の腎臓のない新生児です。腎の低形成,あるいは無形成といって,腎臓としての役割を果すことができないような,ほんの小さな形だけの腎であったり時には,全くない新生児もあります。腎が無形成なのですから,当然ながら,尿管・膀胱も形成されていないか,あっても痕せき程度のもので、尿を作ったりためることはできません。したがって,このポッター症候群の症例は腎がないために尿を作ることができません。そんな胎児は生きていることができるのでしょうか。それが立派に生きていられるのです。というのは,胎児時代は,血液中の老はい物,ことにBUNなど,主として腎から排泄されるべきものは、胎児の血液中から胎盤を通して母体へ移され、母体の腎や肝を通して排泄されていますので,胎児自身は腎で尿を作れなくても,ちょうど胎盤が人工腎臓の役目を果して,毎日人工透析をうけているのと同じ状態になります。したがって,胎児は腎機能が全く営まれなくても成長することができるのです。
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