Medical Scope
ダウン症候群の出生前診断につして
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.177
発行日 1991年2月25日
Published Date 1991/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900270
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染色体の異常(21-トリソミーなど)でおこるダウン症候群Down syndromeの出生前診断について,最近いくつか話題が登場しています。いまから20〜30年前までは,ダウン症候群のベビーの出生は分娩数500〜600に対して1例の割合であったのですが,羊水分析やCVS(chorionic villi sampling)という絨毛診断で出生前診断がつくようになり,今日では分娩数1,000に対して1例と出生率が下がってきました。また,臨床統計的な研究から,高齢の妊婦や前回ダウン症候群のベビーを娩出した症例に発生率が高いことがわかってくると,このようなハイリスク妊婦が出生前診断を受ける割合が高まり,その結果としてダウン症候群の出生は大きく減少したのです。ダウン症候群の発生率は,妊婦が35歳以上になると約6倍,40歳以上になると約10倍に上昇するといわれているので,現在では35歳以上の妊婦で希望者があれば出生前診断をするという診療方針をとる施設が多いようです。アメリカでは,なかばそれを義務づけている地域もあります。
このようにしてダウン症候群などの染色体異常児が出生前に診断されると,高率で人工妊娠中絶が行なおれてしまうので,今日では35歳以上の妊婦からのダウン症候群の出生率は著しく減少しました。したがって,いまダウン症候群児を分娩する妊婦の多くは34歳以下の若い世代の母体であるといえるでしょう。
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