連載 フランス出産事情—変わりゆく出産・助産婦・病院・15(最終回)
多様化する出産と助産婦の未来
舩橋 惠子
1
1桜美林大学国際学部
pp.928-934
発行日 1991年10月25日
Published Date 1991/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900435
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産院の組織社会学
これまで紹介してきたフランスの4つの「評判の産院」を比較検討してみると,次のような発見がある。
まず第1に,産院は,その立地する地域の性格に大きく左右される。考えてみれば当然のことだが,病院組織は,「閉じられたシステム」ではなく,患者という外部からやってくる者のニードに応えねば存続しえない「開かれたシステム」である。地域の特性が,利用者のニードの性格を規定し,したがって産院組織のあり方をも規定していく。たとえばル・アーブルは,移民の増大する地方大都市の公立医療センターであり,ピティヴィエは,静かな農村地帯の小さな町で地域医療の中心となる公立病院,リラは,パリ近郊にあって知的エコロジストを集める私立産院,ブルエは,パリの貧民街で労働組合運動の中から生まれた共済病院であった。これらの産院のあり方が,設立主体の性格(公立か私立か,総合病院の産科か産婦人科だけの産院か)や,その中で活躍したヒーローたちの個性とともに,まさに立地地域の特性を色濃く反映したものであることは,すでに連載中に断片的に指摘してきた通りである。
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