特別寄稿
ドイツ(旧西ドイツ)の助産婦と出産
松岡 悦子
1
1旭川医科大学(社会学)
pp.317-323
発行日 1992年4月25日
Published Date 1992/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900549
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ミュンヘンの南20kmほどのところにあるシュタンベルク市は,湖のほとりのとてもきれいな町である。そこの市立病院の産科医師アンドレアスは,医者と同時にインドネシアをフィールドにする文化人類学者でもあった。私はそのアンドレアスの好意でシュタンベルク市立病院の出産を見せてもらうことができた。ただ私はドイツ語ができないためにとても不自由をした。ドイツの人,特にミュンヘンのようなバイエルン州の年輩の人は意外と英語を喋らない。だからせっかく出産に立ち会えても,言葉を交わせる助産婦や産婦に出会わなければ,詳しいことを聞いたり,質問したりすることができない。その点で,ドイツの調査ではずいぶん残念な思いをした。しかも,ドイツには国内で出版されている英語の新聞,雑誌がない。だから,ドイツ語が読めなければ,ドイツの国内でドイツがどう論じられているのかわからず,結局イギリスやアメリカからのニュースでドイツ国内の様子を知るはめになった。
これは出産についても同様で,何か英語の文献はないかと探したが見つからなかった1)。これはオランダとは大きな違いで,オランダでは出産の調査や助産婦の活動ぶりを知らせるための文章はむしろ英語で発表されていた。そのようなわけで,ドイツでの出産を振り返ってみると,産婦や助産婦が発した言葉や医者と産婦との会話がわからないために,出産の雰囲気を十分に感じ取れなかったところが多い。
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