連載 フランス出産事情—変わりゆく出産・助産婦・病院・4
わたしのフランス出産体験③—助産婦の介助で出産
舩橋 惠子
1
1桜美林大学国際学部
pp.716-720
発行日 1990年8月25日
Published Date 1990/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900155
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いよいよ,その時が来た
6月11日夜,テレビニュースを見ていると,急に水が流れるのを感じた。しばらく様子を見ていたが,破水は明らかで,どんどん流れ始めた。陣痛はいっこうに始まらないので,おおいに迷ったが,ガイドブックを見ても「破水したら緊急に入院せよ」と書いてあるので,私は夫に出発の支度をするように頼んだ。かねてからの打合せのとおり,子供たちには,台所に書き置きとパンを残した。
夜中の2時ごろ,産院に電話し,救急車を呼んだ。フランスの救急車は,ほとんどが民間小規模経営で,医療付の特殊タクシーのようなものと考えればよい。静まり返った夜の町を救急車にゆられながら,不安とさまざまな感慨が交錯した。羊水がこんなにどんどん失われて,赤ちゃんはだいじょうぶだろうか。以前はおなかの中であばれて痛いくらいだったのに,今は全く動かない。幸い,妊娠38週目に入っていた。しかし,陣痛が来なかったら,赤ちゃんはどうやって生まれてくるのか。もしも,難産になったら,どうやって上の2人の子供の世話をしていけるだろう。こんな時,夫が付き添ってそこにいるということは,ありがたかった。私は勇気づけられ落ち着いた。
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