連載 フランス出産事情—変わりゆく出産・助産婦・病院・2
わたしのフランス出産体験①—社会保障・病院・検診
舩橋 惠子
1
1桜美林大学国際学部専任
pp.542-547
発行日 1990年6月25日
Published Date 1990/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900119
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フランスで妊娠したら
ひょっとするとできたのかなと思ったら,街の薬屋で妊娠試薬を買い求め,誰にでも簡単に妊娠テストができる。自宅で,早朝の尿に試薬を混ぜて,色の変化を見るだけで,確実にわかる。費用は,2,000円程度。フランスでは,できるだけ早く確実に妊娠の有無を知る必要がある。と言うのは,産むにせよ産まないにせよ,さっさとその手続きを始めないと間に合わないからである。
フランスの合法的中絶可能期間は,妊娠10週目までである。しかも,最終生理の開始日から数えて2週間後を,推定受胎日すなわち妊娠1日目と数えるので,たとえば生理が2週間も遅れている,もしやと気づいた時は,すでに5週目に入っているわけである。複雑な諸手続きや病院の予約待ちなどで時間をとられたり,迷ってぐずぐずしていると,あっと言う間に10週などという期限を過ぎてしまう。期限を過ぎると,もうフランスでは中絶はできないので,もっと期限のゆるやかな外国へ行って,手術を受けなければならなくなる。ただし高齢妊婦(38歳以上)で,17週目の羊水検査により染色体異常が発見された場合は,期限を過ぎていても,希望すれば,「治療上の中絶」が認められている。カトリックの国フランスでは,もとより中絶に対する態度は厳しく,激しい女性運動の後に中絶そのものが合法化されたのは,1975年のことである。また,一般に,すべての産科医師・すべての産院が中絶を受け付けるわけではない。
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