Medical Scope
分娩前胎児仮死の発症予測
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.1057
発行日 1989年12月25日
Published Date 1989/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207753
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今年も最後になりましたので,大きな話題を選んでみました。それは「分娩前胎児仮死の予測」です。胎児心拍数モニタリングの手技が周産期医療にとり入れられて,はや20年の年月がたちました。今では,胎児心拍数モニタリングなしでハイリスク妊娠の管理ができないほど身近なものになっています。その胎児心拍数モニタリングの最大の目的は「胎児仮死」の発見や早期診断にあるのですが,一方,何のリスクもない正常の胎児の安全管理にも大変な貢献をしています。なかでもNSTは分娩前の胎児仮死の診断に威力を発揮して,ハイリスク妊娠での胎児死亡例を減少させているのは,皆さんもよく経験されている通りです。
そこで今月の話題ですが,1989年という現在,胎児が胎児仮死になったということを,いくら早期といえどもそうなってから診断したのではもう遅くはないだろうか,という疑問なのです。胎児仮死というのは診断名で,そのときの胎児の病態はどうなっているかといえば,軽症重症の差はあっても,低酸素症の状態になっていることは間違いないのです。そこで,低酸素症の状態になる前に,つまり胎児が胎児仮死になる前に,この症例はもう少しすると胎児仮死になるよということを予知したり,予測することがより有益で重要な意義をもってくるのです。その方法について,周産期医学にたずさわる多くの医学者がさまざまな研究を重ねているのが,今日の胎児医学の最前線です。
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