臨床研修セミナー 胎児仮死
成熟児の胎児仮死
佐藤 章
1
,
遠藤 力
1
Akira Sato
1
,
Tsutomu Endo
1
1福島県立医科大学産婦人科学講座
pp.80-83
発行日 1990年1月10日
Published Date 1990/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904822
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
胎児仮死の定義として,日本産科婦人科学会は,1972年「胎児胎盤系における呼吸,循環不全を主徴とする症候群」と定義している。また英語ではfetal distressという言葉が使用されているが,世界的に統一した定義はない。これは,すなわち胎児仮死の病態生理がまだ解明されていないことを示すものである。従って,胎児仮死の診断も確定的なものはないと言ってよい。しかし,臨床的に問題になっていることは,近年NICUの充実により未熟児のintact survivalはかなりの水準に達しているが,成熟児の脳性麻痺は依然として存在している事実があり,NICUを退院できず,NICUにかなりの時期,植物人間的に過ごさざるを得ない状態の子供がいるのが現状である。これらの成熟児の原因の大部分は,分娩前および分娩中の胎児仮死を見過ごしたため新生児仮死に陥り,その結果としてCPになっている子供達である。このことは産科医にとっては重要な問題であり,出生前の胎児仮死の診断は確定的なものはないといっても重要な問題である。ここでは成熟児の胎児仮死の診断法につき解説する。
Copyright © 1990, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.