特集 図でみる病態産婦人科学--適正治療のために
胎児・新生児
潜在胎児仮死
東舘 紀子
1
,
武田 佳彦
1
,
中林 正雄
2
,
諸橋 侃
2
,
坂元 正一
2
Noriko Higashidate
1
,
Yoshihiko Takeda
1
,
Masao Nakabayashi
2
1東京女子医科大学産婦人科学教室
2東京女子医科大学母子総合医療センター
pp.520-524
発行日 1985年6月10日
Published Date 1985/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207203
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I.潜在胎児仮死の概念
潜在胎児仮死(latent fetal distress)とは胎児・胎盤系における呼吸・循環不全が予測できる状態をさすと定義されている(日産婦産科婦人科用語問題委員会)。すなわち,自然に放置された状態では胎児仮死の症候を現わしていないが,もし何らかの負荷が加えられたとき顕性となるか,またはその可能性を強くもっている状態をいう。
胎児仮死(fetal distress)とは胎児・胎盤系における呼吸・循環不全を主徴とする症候群と定義されているが,このような状態が今後発生することを予測できるような状態,または試験的に負荷をかけたときに胎児仮死の症状が現われる状態を潜在胎児仮死というのである。潜在胎児仮死が分娩にさいして必ずしも胎児仮死に進行するとは限らず,潜在胎児仮死の状態において,これを妊娠中の諸検査によって早期に診断し,いろいろな治療によって胎児仮死への進行を阻止することができれば周産期管理として重要な意義をもつこととなる。近年とくに潜在胎児仮死の病態生理,診断,治療が注目される理由はそこにある。
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