連載 Medical Scope
胎児仮死と胎児心拍数の変化
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.434
発行日 1975年8月25日
Published Date 1975/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204908
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分娩中の産婦を管理する時には,胎児心音の聴取が最大のポイントになることはいうまでもありません。しかし古い時代の産科学では,胎児心拍数がいくつあるか,どう変化したかなど,胎児心拍数のみの変動をチェックするにすぎなかったのですが,近代産科学では,これら胎児心拍数の変化は陣痛との関係,羊水との関係などを総合して考えるべきであるという方向へ変わってきました。
正常の胎児心拍数は140/min.というように,1分間140ぐらいを示します。もう,トラウベの聴診器で,5秒毎にかぞえて,11,10,11,などという表現法はやめましょう。1分間いくつということで表現して下さい。この胎児心拍数は1分間160以上,あるいは,120以下になると,fetal distressという診断が下されます。この「fetal distress」という英語は日本語のように使われています。この日本語名は「胎児仮死」といい,胎児切迫仮死といった時代がありましたが,これは胎児に仮死がさし迫っている状態ではなく,現在胎児はすでに仮死状態にあるので,切迫の字をとり,現在は「胎児仮死」と表現するのが正しいとされ,学会でもこのように用いられています。つまり,胎児仮死は胎児の呼吸循環不全を主徴とする症候群であり,胎児が何らかの原因で酸素不足におち込んだ状態であるといえます。
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