Medical Scope
母体搬送maternal transportの重要性〔1〕
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.702
発行日 1983年8月25日
Published Date 1983/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206298
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Maternal transport(マターナル・トランスポート)という言葉を最近よく耳にしませんか。これは日本語では母体搬送とでも訳すのでしょうが,もうmaternal transportという英語がそのまま使われるようになっていると思いますので,このまま覚えて下さい。では,一体どういうことを意味するのかといいますと,周産期の救急診療においては出生したハイリスクの新生児や未熟児(低出生体重児)をNICUのある施設へ送るのに,生まれたベビーだけを送院する新生児搬送neonatal transportという方法と,生まれる前に母体ごとNICUのある病院の産科へ送院し,そこで生ませて,生まれたベビーはその施設のNICUへ収容するという母体搬送maternal transportという方法の2つがあるのです。後で述べた母体ごと運ぶという救急システムをmaternal transportというのですが,これは1974年頃からアメリカを中心にその意義が認められ,だんだんとひろまってきたものです。
アメリカのマサチューセッツ州にあるセント・マーガレット病院は大変に周産期の診療が進歩しているところですが,1972年には523例のmaternal transportしかなかったのですが,1974年には819例になって,1.7倍も増加しました。そうしてみたら,何と新生児死亡率は35%も減少したというのです。
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