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▶要約
無侵襲的出生前遺伝学的検査(noninvasive prenatal testing : NIPT)は2013年4月より国内で導入された検査であり,当院では2016年9月より開始した.NIPTは母体血漿中の胎児cell-free DNAを用いて胎児染色体異常を検出する.NIPTは,精度不良や母体要因(maternal event)などによるZスコアの異常,Zスコアのボーダーラインにより,判定保留の結果となる場合がある.今回,われわれは,maternal eventによりNIPT判定保留となった1症例を経験したため報告する.
症例は38歳,2妊1産(正常経腟分娩).自然妊娠により妊娠成立した.妊娠12週1日,高齢妊娠を理由に出生前診断希望にて当院紹介受診.NIPTを希望され,妊娠12週5日にNIPTを受検し,検査結果は判定保留であった.判定保留の原因として,DNA増幅の程度から母体のcopy number variant(CNV)の影響が考えられた.胎児エコー上でも,有意な所見は認めていなかった.結果説明および今後の方針に関する遺伝カウンセリング後,胎児において染色体の欠失/重複の有無を確認する目的で,妊娠16週1日に羊水穿刺を施行し,羊水細胞にてG-bandおよびSNPArrayを行った.その結果,微細欠失/重複を認めず,正常核型であった.その後,さらに判定保留の原因検索として,maternal eventであることを確認する目的で母体血でのSNPマイクロアレイ検査を行い,21染色体q21.1-q21.2領域に1.97MBのmicro duplicationを認めた.臨床的意味のないCNVと考えられた.児は妊娠40週4日,3,412 g,男児,Apgar score 1分値9点,5分値10点にて正常経腟分娩となり,現時点で特記すべき臨床症状はない.
NIPTの結果で判定保留になる確率は0.39%であり,決して高い確率ではない.しかしながら,受検者は不安になることになり,受検前や結果判定後のカウンセリングが重要となる.NIPTでは胎児染色体異常以外にも偶発的に母体疾患や母体の染色体異常が検出される可能性がある.今後疾患が発現してくる可能性のあるCNVの場合は本人・家族の健康管理に有用である一方で,評価がはっきりしないCNVもあり,妊娠初期の詳細な超音波検査を交えた胎児についての説明や遺伝カウンセリングが重要と考える.
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