グラフ解説
妊産婦健康管理に古典的労働を組み込む意義について
吉村 正
1
1吉村病院
pp.574-577
発行日 1982年7月25日
Published Date 1982/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206054
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■高度経済成長下の日常生活
現今の妊婦健康管理方式に関しては,その多くが母体の保護という立場に立脚しており,それはもちろん正しいことである。しかし,母体の保護と一口にいっても,その意味するところは広く,かえって分娩時に難産をひき起こす結果を招いている場合もある。分娩の様相は社会的背景と深くかかわっていることは周知の事実であるが,昨今のわが国の状況を考えると,高度経済成長政策の進展以来,いろいろのひずみを含みつつも物質的には豊かになり,福祉の向上とも相まって肉体的労働の強度は緩和され,栄養状況も一般的に量的質的に高まり,我々の生活の内容は曲りなりにも改善されてきた。しかし,その多くの部分において,ゆきすぎた面も見られるようになった結果,過保護に堕したと見られる点もないではない。現在の労働のあり方も社会の工業化の傾向の強まった結果,精神労働の緊張は著しく高まった反面,肉体的労働は昔と異なり全身を動かすものではなくなって部分的になり,アンバランスな不健康なあり方になっているか,または一般に運動不足気味になっているといってよい。
また栄養状況を見るに,少なくとも飢えという状態からは完全に解放され,多くの人が栄養過剰に悩んでいるのが実状である。
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