特集 妊娠・出産とこころの変化
妊娠・出産・育児をめぐる憂うつ—その二つの性格タイプ
小曽戸 明子
1
1東京大学医学部付属病院分院神経科
pp.122-124
発行日 1982年2月25日
Published Date 1982/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205971
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妊娠・出産に伴う「精神変調」
妊娠や出産に伴う「精神変調」は,この時期の体内のホルモンなどの変動の激しさ,母親になるという大きな精神的課題,現実の日常仕事量の増大などを考えあわせると,はっきりとした疾病の形をとらなくても,ほとんどの女性に何らかの形で生じていると考えるほうが自然でしょう。ただ,本人も周囲もそうした「変調」に気づかぬうちに何らかの配慮がなされていることが多く,たとえば何か楽しいことで気分転換をはかるとか,休息を十分にとるとか,ちょっとしたいたわりのことばを受けることなどで,ごくあたり前のこととして乗り越え,成熟のきっかけになってゆくという事例が多くみられます。それは母から娘へと脈々と伝えられた素質を自覚してゆくしたたかな変化ですが,中には「ゆううつ」におち入る人がいます。そしてこの「ゆううつ」は重症な精神変調の初期症状として軽視できないものです。
症状としては,ゆううつな気分,1日のうちでの気分の変動(朝が特にすぐれないことが多い),悲哀,絶望感,不安,あせり,いらいら感,罪責感,苦悶感,無感動,仕事の能率の低下,全身の倦怠感,不調感,頭部不快感,睡眠障害,食欲不振,便秘,体重減少などがあげられます。その訴えの表現はいろいろです。
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