Derm.'99
メラノーマの憂うつと挑戦
塚本 克彦
1
1山梨医科大学皮膚科
pp.132
発行日 1999年4月15日
Published Date 1999/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412902874
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病棟医長をしている.様々な疾患で入院してくる患者に対し,大学病院での治療の基本理念は2つあると思う.1つは,確立された安全な治療を行えること.2つめは,従来の治療の効果が期待できない場合に,新しい治療を試みることである.どこの大学にも,転移を起こした皮膚癌患者が何人か入院しているだろう.メラノーマに限らず打つ手がなく頭が痛い.術後2〜3年して,外来でフォローしていたステージII-IIIのメラノーマ患者に転移が見つかったときは,いつも憂うつな気分である.
しかし一方,最近の免疫治療の発展には目覚ましいものがある.サイトカインを使った治療はもちろん,最新の報告では,抗原提示細胞である樹状細胞とメラノーマ癌抗原,サイトカインを巧みに使った免疫療法が,実際のメラノーマ患者で効果をあげている1,2).CTLに認識されるメラノーマ癌抗原のいくつかが,正常メラノサイトに特異的に発現しているメラノソーム関連蛋白(チロシナーゼ,TRP 1,TRP 2,gp 100,MART 1など)3)であり,しかも患者のHLAのタイプにより,癌抗原として提示されやすいペプチドまでもわかってきている.そのうち,HLAのこのタイプの患者には,AとBとCのペプチドをカクテルして樹状細胞と混ぜワクチン治療を行えばよいという時代がやってくるかもしれない.
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