特集 母子関係論—その最近の成果
発達初期の母子関係
古澤 頼雄
1
1神戸大学教育学部(発達心理学)
pp.654-660
発行日 1981年9月25日
Published Date 1981/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205897
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はじめに
哺乳動物のうちでも,人間ほどに未成熟なかたちで誕生してくる動物はいないといわれている。他の動物ならば,誕生後数時間もたてば自分で移動することができるようになるのに,人間では数か月からほぼ1年かかるといった具合である。こうみると,人間のごく初期は,まだ人間以前のまったく受動的な個体が,周囲の人たちの手によって発達を促され,だんだんと人間になってくるというように考えられる。
しかし,ごく生まれたての赤ちゃんにせよ,赤ちゃんは赤ちゃんなりに自分の周囲の世界に能動的に働きかけていることが,最近のいろいろな研究から明らかになっている。そして,それらの所見は,母子関係の形成における赤ちゃんの役割についても,新しい見直しを必要としてきている。
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