Medical Scope
胎児診断と医の倫理
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.640
発行日 1981年8月25日
Published Date 1981/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205894
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この雑誌をごらんの皆さんには,もう御存知の方もおいでのことと思いますが,今日はアメリカで起きた胎児診断をめぐる社会的な話題をのせることにしました。ちょっと,今までのメディカル・スコープとは異なる話題かも知れませんが,今後の私達には切実な問題点ですので,皆さんとともに考えてみることにしました。
そのニュースというのは,ある40歳の高年の妊婦が,自分が高年だから胎児がダウン症候群かもしれないので,胎児診断をしてほしいと産科医を訪れたことで始まります。この妊婦を診察した医師は超音波断層診断によって,妊娠は双胎で,しかも二羊膜腔の双胎であることがわかったので,その旨を妊婦に話しました。そしてこの場合,別々のふたつの羊膜腔を穿刺して羊水をとり,別々にふたりの胎児の脱落細胞から染色体を分析してダウン症候群かどうか診断しなくてはならないことを説明しました。よく,ただ羊水穿刺をして染色体分析をして正常だったので安心して分娩へもっていくと,妊娠途中で双胎であることがわかり,どちらの胎児の染色体を調べたのかわからないことになり,その結論に困ることがあります。こんなとき,一羊膜腔の一卵性双胎なら染色体も同じなので,両方の胎児の羊水を一検体で調べることができます。しかし,二羊膜腔の双胎では二卵性のこともあり,胎児は第一児,第二児と別々の羊膜腔を穿刺して羊水をとり,別々に染色体分析をしなくてはなりません。
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