Medical Scope
胎児の心筋梗塞
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.1159
発行日 1986年12月25日
Published Date 1986/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207040
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今月も,先月にひき続き,第8回周産期医学国際シンポジウムからの話題をお話ししましょう。いつか,この欄にも書きましたが,分娩中の胎児心拍数モニタリングで遅発一過性徐脈(latedeceleration)が出はじめた頃には基線細変動(baseline variability)があるのですが,30分間も続けて出ていると基線細変動がなくなった状態のlate decelerationになるということでしたね。そして,こうなってしまうと,酸素不足だけでなく,心筋にも障害をうけているので,胎児は心筋梗塞のような心筋障害で死亡することが多くなるということをお話したのを覚えてくれているでしょうか。胎児の心筋障害ということが,この研究が発表された4〜5年前から話題にあがるようになってきたのです。
さて,IUGR(Intrauterine Growth Retardation,子宮内発育遅延)の胎児の場合,NSTを行なっていて,まだreactiveだと思っていたら突然子宮内で死亡することがまれにあるのを経験されたことはありませんか。これらの症例の死亡原因は心筋梗塞が多いということなのです。IUGRのような胎盤の機能が悪い症例では,胎盤内での血管(胎児の血管)に対する抵抗が強くなり,胎児は強い心拍動を要求されます。胎児の心拍出力が強くないと,胎盤のなかを血液が回れなくなるからです。
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