Medical Scope
胎便性腹膜炎の胎児診断
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.83
発行日 1990年1月25日
Published Date 1990/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900019
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超音波断層法が広く妊婦診察にとり入れられてきたので,多くの胎児病が出生前に診断されるようになってきました。そのなかには,現代の周産期医療の力をもってしても何とも救命しようのない疾患もありますが,適切な妊娠時期での胎児診断を行ない,適切なタイミングで安全な分娩をはかり,出生後に治療すると完全な治癒が期待できるものも数多くみつかりました。そのような胎児病のひとつが,ここにあげた胎便性腹膜炎Mechonium peritonitisです。
皆さんは胎便性腹膜炎という疾患のことはよく知っていることと思いますが,もう1回よく思い出して下さい。胎児時代に何らかの原因で胎児の腸管内にある胎便が腹腔内に流れ出し,腸管をはじめとする腹腔内臓器をひとつの塊りのように癒着させてしまう疾患です。当然ながら,出生した新生児はイレウスのような状態になり手術となりますが,何しろ石灰化をひきおこしているような強力な癒着のために,その予後も必ずしも良好とはいえません。ところが,この疾患はすでに胎児時代にできあがっているわけですから,胎児診断が行なわれるようになったのです。すでに胎児時代からイレウスの状態なので,拡張した腸管像などが超音波断層像でわかり,石灰化の所見も診断できるようになりました。
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